八甲田スキー場遭難事件 初心者の春スキーは難しい

最終更新: 6月16日


関東は晴天に恵まれていますが、日本海沿いの東北や北海道ではここ数日、猛吹雪の毎日でした。

ホワイトアウトを起こし、交通事故が多発。

雪溜まりに車が嵌って動かなくなり、排気ガスが車内に充満し亡くなる方や、低体温で亡くなる方もいらっしゃるとのこと。

この時期は、天候が荒れます。

明治35年1月、日本陸軍第8師団歩兵隊が雪中行軍の途中で遭難した、八甲田雪中行軍遭難事件もこの時期でした。

訓練参加者210名中199名が死亡する、世界最大級の山岳遭難事件と言われています。



八甲田山は一つの山ではなく、連峰の総称だそうです。

山岳スキーの名所でもあり、春になると大きなゴンドラに沢山のスキー客が乗り込み、山頂を目指します。

ロープウェーの山頂公園駅がある田茂萢岳は、連峰の一つです。

お椀を伏せたような形をしており、山頂から裾へ滑降するコースが幾つかあります。

長男が中学生、次男が小学生の頃、八甲田へ春スキーに出掛けたときの出来事です。

中学生の長男は、私と一緒にゴンドラへ乗り、山頂から滑ることに。

まだ小学生だった次男は、麓の八甲田スキー場でリフトに乗り、家内がゲストハウスで見守る中、一人で滑ることになりました。



山頂は思いの外狭く、百人のスキーヤーが降り立てば、殆んど余裕が無いほど。

端から早く滑り降りないと、円の中心部にいる人は何も出来ません。

実際は広いのかも知れませんが、その時私はそう感じました。

スキー場のコース見取り図には、幾つかのコースがあるように書いていました。

しかし、実際に山頂公園駅へ到着すると、何の誘導もありません。

少なくとも、その当時はそのように思いました。

圧雪し整備されたゲレンデは存在しません。

何処からスタートすれば良いのか人に尋ねると、何処でも良いとの返事。

八甲田山を知り尽くしていれば別でしょうが、何しろ全く初めてなので、人が滑った場所を暫く観察し、参考にしようと考えました。

しかし、人それぞれ千差万別。

四方八方、散らばるかのように滑り始めます。

皆さんがスタートする一定の場所はなく、一番緩やかそうなところを選んで滑り出すしかありません。

子供と一緒でもあり、少しずつ降りては止まり、降りては止まりを繰り返しながら進んで行きました。

お世辞にも上手とは言えない技術で、八甲田の春スキーを遣ってみようと思うこと自体が無謀です。

現実は滑ると言うより、少しずつ山を下るという感覚。

途中、足元が全く見えない断崖絶壁に遭遇した時は、泣きたくなりました。

降りてきた斜面を再び登り、迂回に迂回を繰り返す、正に雪中行軍です。



スタートして暫くしたころ、ふと気付けば息子が見当たりません。

「おーい、おーい」と叫ぶと、小さな声で「おーい、おーい」と聞こえます。

山彦にしては、一寸おかしい。

良く辺りを探すと、木の幹を抱え込むように座り込んだ息子が坂の途中にいました。

「何してるの?」と聞くと。

「滑っていたら、こうなったの」と言う。

どうも、木の真正面から衝突し、幹を抱え込む状態で止まったらしい。

まるで、漫画のような格好です。

確かに、スキー板を付けたままで座り込んでしまえば、身動き出来ません。

雪の窪みから引き上げ、更に下へと向かうこと2時間。

山頂スタートから3時間ほどで、漸く麓の道路へ辿り着きました。



一方その頃、麓にある普通のゲレンデでは、別の事件が起こっていました。

次男一人でリフトに乗り込んだものの、到着地点で降りることが出来ず、そのまま折り返し。

また、出発した搭乗地点まで戻ってくるかと思いきや、途中で停止して仕舞いました。

リフトは止まったまま、次男は宙ぶらりんの状態。

事の経緯は不明ですが、係員が梯子を掛け、次男の救出が始まりました。

スキー場にアナウンスが轟き、場内は騒然と。

家内は、恥ずかしくて肩身の狭い思いをしたというお話です。

更にまた、私と長男の帰りが余りにも遅いので遭難したかと心配し、捜索願を出す寸前だったと怒りの矛先がこちらに向けられました。



1977年の映画「八甲田山」は、当時の興行成績第1位を獲得しました。

北大路欣也さんの台詞、「天は我々を見放した」は当時、流行語となった程です。

ゴールデンウィークを利用した春スキーですが、図らずもミニミニ版の「天は我々を見放した」状態を体験させて貰いました。

言うまでもなく、八甲田の自然は厳しく、冬季の立ち入りは出来ません。

日露戦争を見据えたものだったのでしょうが、余りにも犠牲が大きい軍事訓練となって仕舞いました。


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