風が吹いても痛い痛風 病気を覚悟の仕事人

最終更新: 6月16日



先日経験した、午後診療の出来事です。

「イタタタ・・。」

足を引き摺りながら診察室へ入ってくる男性患者様。

「先生、痛風みたいです。」

拝見すると、左足の母趾内側が赤く腫れています。

「確かに痛風ですね。何かしました?」と伺うと

「最近、仕事が忙しかったんです。毎日、この暑い中、一日中外に立ってなきゃいけなかったんです。」

「そりゃ、大変ですね。」

「お茶は沢山飲んでいたんです。でも、トイレに一度も行かない位、汗かいてました。」

昔、腎梗塞を患った既往歴がある患者様です。

「危ないですよ、腎機能も落ちるし。何処かの血管詰まって倒れるかも知れませんよ。」

「仕方ないんです。仕事だから。」


大きなイベントの、企画運営を数多く手がけているそうです。

屋外の仕事が大半なので、夏は特に厳しい。

「一緒に仕事していた相方は、倒れて入院しましたよ。」と涼しい顔でお話します。

仕事とは言え、命懸けです。



今回は痛風について少し。


痛風は身体に尿酸が貯まり、関節のなかに結晶を作って炎症を起こし、痛みを起こす病気です。

尿酸は、遺伝子を構成するDNAやエネルギーとして活躍するATPが分解されて出来た代謝産物です。

人間以外、他の動物では分解する能力があり、身体に貯まりません。

人間は、この尿酸の分解酵素がなく、溜まってしまうのです。

尿酸の排泄は一部消化管、殆どは腎臓から尿中へ排泄され出ていきます。

何らかの要因で血中の尿酸値が高くなると、血液中へ溶けなくなった尿酸は結晶を作り始め、これが関節の中で炎症を起こし、痛む訳です。


長い間、尿酸値が高い状態が続くと、腎臓に尿酸が貯まり、その機能を落とすことになります。

痛風腎と呼ばれる状態です。

最近は殆ど経験しませんが、昔は典型的な痛風腎を経験したことがあります。

その患者様は、身体のあちこちに痛風結節を作り、両方の足は一体どうしてこんな形になったかと思うほど。

大変なお金持ちで、昔は地方の議員をなさっていた方でした。

他にも色々な役を引き受けていたので、お付き合いが多く、その分ストレスも多かったのではないかと思います。

最終的に、人工透析へ移行されました。


痛風は男性に起こりやすい病気です。

その理由は、女性ホルモンが影響していると言われています。

女性ホルモンには、腎臓から尿酸を排泄する作用があるため、女性は血中尿酸値を低く保ち易いのだそうです。

しかし当然、閉経期を越えるとその差は次第に縮まってきます。

そのため、女性にも発症します。

比較的若くして痛風になる女性の場合、遺伝的な要因が関与しているケースも考えられます。


尿酸が高くなる要因としては、大きく分けて遺伝的な要因と環境的な要因があります。


遺伝的な要因について。

強く影響を与える遺伝子と、弱く影響する遺伝子が存在しますが、大多数は弱く影響を与える遺伝子です。

そのなかにも幾つかの遺伝子がありますが、何れも大体腎臓の尿細管に発現し、物質の輸送に関連する遺伝子です。

一部は消化管に存在し、これも消化管から尿酸が排泄される機能に関与しています。


環境的な要因について。

大別して、食生活、飲酒、ストレスがあります。

食生活の要因として、ご存じのように尿酸を上げる食品として最も有名なものは肉です。

野菜や乳製品は尿酸を減らすと一般的には考えられています。

しかし、食事に偏りがあれば、別な病気の原因になります。

バランスのとれた食生活を心掛けることが重要です。


アルコールが尿酸値を高くするメカニズムは、アルコールが分解されるときに尿酸が出来、その時に同時に出来る乳酸が尿酸を体内に蓄積するように働くからです。

取り敢えず、アルコールは程々にしておくべきでしょう。


残念ながら、身体でつくられる尿酸の殆どは、自分の身体の新陳代謝で作られたもの。

つまり、食事のみで大きく血中尿酸値は下がらないと言うことになります。

しかし、ご自分で可能な治療は食事療法です。

少なくとも暴飲暴食はご法度に致しましょう。


ストレスは大きな要因です。

精神的なストレスという意味だけでなく、激しい運動も身体にはストレスになります。

激しい運動の直後に、尿酸値が急激に上昇することが良く知られています。

脱水状態も尿酸を上げます。


痛風発作の時にご自分で行う対処として、気を付けて置きたいことは、アセチルサリチル酸の服用です。

アセチルサリチル酸を沢山服用することにより、発作が増悪する場合があります。

市販薬の痛み止を使用するときには、内容を確認しておいた方が安全でしょう。

先ず患部を冷やし、安静にすることが重要です。


痛風の発作時は、取り敢えず「非ステロイド性消炎鎮痛剤」を服用して頂きます。

ある程度、痛みの症状がなくなった時点を目安に、尿酸を下げる薬を開始。

血中尿酸値をみながら、6mg/dlを目標に投薬量の調節を行います。


尿酸値を下げる薬には、大別して合成阻害薬と排泄促進薬の二通りあります。

この患者様の場合、腎機能への負担を考慮して、合成阻害薬を選択致しました。


暑い最中、1日中炎天下で動き回り、仕事の打ち上げで、焼き鳥屋でレバ焼き食べながらビール飲む。

痛風発作を起こさない人もいますが、発作を起こして下さいと言わんばかりの行動です。

ご本人も直ぐに分かる、痛風の症例をご紹介しました。


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