COVID-19による死亡率の性差とエストロゲンは関係するか

最終更新: 6月15日

パンデミックとなった、今回の新型コロナウイルス感染症。 今のところ日本では、イタリアやアメリカで報告されている大惨事はみられません。 余談は許しませんが、出来るだけ早く治まることを祈るばかりです。 これまで、中国やイタリアなどのデータから判明している死亡率の男女差について、非常に興味深い点があります。 今までに海外で報告されている死亡率の男女差は、男性の方が高いのです。 中国武漢市での統計では、男性の死亡率が2。8%に対し、女性は1.7%と男性に比べて低かったようですし、イタリアでも、男性は10.6%であったのに対し、女性は6%と、同様に女性の方が低かったのです。 同様な現象は、他のコロナウイルスが原因となったSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)でも男性の死亡率が高かったことが分かっています。 その一因と考えられているのが、女性ホルモン(エストロゲン)です。 アメリカ合衆国アイオワ大学のマウスを使った実験で、コロナウイルスに感染させた結果、人間の場合と同じように雄の死亡率が高かったそうです。 次に、雌の卵巣を取り出した後、コロナウイルスに感染させてみた結果、雌の死亡率が大幅に上昇したということです。 このことから、エストロゲンが持っている何らかの作用で、コロナウイルス感染への効果をもたらしたのではないかと考えることが出来ます。 そこで、大豆に含まれるイソフラボンの効果を利用できないかと考えるのは、自然の流れかも知れません。 大豆に含まれるイソフラボンは、分子構造が女性ホルモンの「エストロゲン」に似ているため「植物エストロゲン」と呼ばれています。 納豆やみそ汁などの大豆食品を毎日摂っていれば、新型コロナウイルスの感染リスクを少しでも下げることが出来るのではないかと期待してしまいます。 しかし、腸内にエクオール産生菌を持たない人は、イソフラボンによるエストロゲン(女性ホルモン)様の作用は期待出来ません。 また、エクオール産生菌を持っている人は、30~60%だと考えられており、エクオール産生能力にも相当な個体差があるといわれています。 しかも、一体どの程度摂取すれば一定の効果が得られるのか、全く分かりません。 大量に大豆食品を摂取したとしても、感染リスクが下がることを期待するのは無理でしょう。 もう一つ性差に関連し、興味深い話があります。 新型コロナウイルスが人間の細胞内に感染する場合、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素を利用して侵入しているそうです。 アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素は、人間の身体に広く分布していますが、肺や心臓、消化管などに多く、また精巣にも比較的多く存在するそうです。 しかし、卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素がほとんど存在していないのだそうです。 このことから考えると、女性ホルモンを主に作り出す卵巣へは、新型コロナウイルスの感染を受け難いことになります。

当然のことですが、新型コロナウイルスの感染経路として考えられる部位は気道です。

卵巣への感染は考えられませんが、死亡率の性差という視点から比較してみると、精巣と卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)酵素の分布差があるという事実の妙を感じます。 女性ホルモンには、まだ解明されていない何らかの働きがあり、新型コロナウイルス感染による死亡率の性差を生んでいる可能性を完全に否定することは出来ないかも知れません。 しかし、男性は圧倒的に喫煙率が高いという事実の方が、死亡率に男女差ができる最大の原因になっていることは間違いないでしょう。 女性の方が男性より新型コロナウイルス感染による死亡率が低い理由を、無理にエストロゲンと関連させて判断するのは多少、飛躍し過ぎた考え方だろうと思います。

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